企業史と史料館のこと
先日、あるメーカーの工場に付設された史料館を見学する機会に恵まれました。この史料館設立の目的は、主として従業員への社史教育にあるとのことでした。社史を作る目的に、「従業員教育」を盛り込む事例はよくあり、実際、完成後に社史を利用される企業は多いものです。
企業博物館・史料館は、一般的に、
1 : 創業者、中興の祖を顕彰する社員教育のための「史料館」
2 : 歴史の長い企業などでは、企業の情報センターとしての「歴史館」
3 : 公共的な責務が大きい企業などでは、親しまれる企業広報活動の「啓蒙館」
4 : ショールームをさらに発展させたものとしての、商品や技術PRの「技術館」
5 : 工場見学を楽しむ「産業館」
に大別されるといわれます。
この史料館では、通常社史に書かれることだけでなく、いわゆる不祥事に括られる ことも展示されていました。さらに企業の存亡に関わる事件などのビデオも作成・公開されていました。
「負」の歴史を外部に公開することは、企業として覚悟の要ることでしょう。何より創業者の理念・熱情を従業員に伝えたい、ということでこの史料館がオープンしたのです。上記分類「1」の更に上を行く展開です。
しかし、展示を支える史料の収集・整理などは途上にあり、今後の課題ということでした。
このコラムでも何度もご案内しておりますが、ここに史料の専門家・アーキビストの出番があります。
史料を提出していただく部署との信頼関係の構築から始まり、収集・整理、目録作り、電子化、アナログ保存のノウハウ、活用の仕方、廃棄の基準づくり等、やはり専門アーキビストとのコラボレーションが必要です。
史料の確実なマネジメントこそが、史料館運営のキーポイントと思われます。