アーカイブ専門家の養成
アーカイブの専門家のことをアーキビストと称し、資料の収集から整理・保管・活用に至るまでのエキスパートとして、文化の砦を守り、説明責任を果たす独自の専門性と職分をもってその業務に従事しています。
しかし、日本においてアーキビストは資格として確立されておらず、知識やスキルの必要要件も明確ではありません。また、公文書館や資料館以外で、アーキビストという職種をおいている企業・団体は稀で、職業としても社会的に認知されているとは言えません。
図書館には司書が、博物館には学芸員が専門職員としており、その役割や資格要件等が図書館法、博物館法などの法令で明確に定められているのと対照的です。国立公文書館では1988年から公文書館職員を対象とした研修会を開催しており、今年度から民間団体による「公文書管理検定」も実施されますが、一般に広まるのは、これからでしょう。
今年の6月24日に成立した公文書管理法でも、アーキビストの資格や養成についての法文化は見送られ、附帯決議のなかで「職員の公文書管理に関する意識改革及び能力向上のための研修並びに専門職員の育成を計画的に実施するとともに、専門職員の資格制度の確立について検討を行うこと」と記述されるに留まりま した。
学習院大学では、2008年4月日本で初めての「アーカイブズ学専攻」を大学院に設置「アーカイブズ学研究の拠点として学知を発信するのみならず、国・地方の文書館の専門職や企業のアーキビストの養成を本専攻では行います」と高らかに宣言しています。また、駿河台大学(埼玉県)文化情報学部では「アート&アーカイブズコース」が設置されました。ようやく大学が自主的にアーキビスト養成に取り組み始めたという段階です。
今後、若い力を集めるためには、アーキビストが社会的に意義のある魅力ある職種であることを知らしめるとともに、スキルが認知され、それを活かした就職先 が見込めることが必要となってくるでしょう。さまざまな困難がありますが、法制定の「追い風」を力に前進してほしいものです。
ヘリテージサービス事業部アーカイブ担当 中川 洋
歴史系博物館学芸員として資料の収集・管理や展示・教育業務に携わり、現職に就く。
現在は、企業および学園アーカイブのコンサルティング、プランニング、マネジメントに従事。