デジタルデータのバックアップ
パソコンの調子が悪い、ハードディスクが壊れた、という話は身近で「よく聞く話」です。徹夜で書いたレポートや、旅先で撮ったデジカメの画像が一瞬で消えた、という「悲劇」は、枚挙にいとまがありません。プライベートではもちろん、ビジネスの場でも、絶対に失ってはならないデジタルデータがたくさんあります。デジタルデータが、予期せぬトラブルで消失してしまうリスクは決して小さくありません。そのリスクに対する備えは万全でしょうか。
ハードディスクは1年間で5%が不具合を起こす、という調査結果があります。また、DVDやCD-ROMの耐用年数は、実際のところ未知数です。PDFなど、デジタル化したデータを「アナログ」であるマイクロフィルムに変換するビジネスがあり、多くの利用者があります。マイクロフィルムは、長い歴史をもち、経年劣化は避けられないとは言え、少なくとも50年程度は大丈夫という実績があり、原理的にもソフトウェアなどを介さずに再現できるので、デジタルメディアよりも信頼性が高いのです。
デジタルの世界も変化してきました。なにより、メディアの価格が数年前とは比べものにならないほど安くなっています。例えば、DVD-Rは一枚30円、ハードディスクは1TB(テラバイト)で1万円というものがあります。また、USBに繋ぐだけで、煩わしい設定なしに、どのパソコンでも使える小型軽量の周辺機器・メディアが一般的になっています。その代表格がUSBメモリースティックです。ただし、小さい分、紛失や盗難のリスクも大きいので、持ち運ぶデータは最小限する必要があります。
利便性は日々向上していますが、データ保存の重要性について、メーカーの認識は、まだまだ弱いと言わざるを得ません。データは、個人のパソコンのハードディスクではなく、バックアップ体制がとられているサーバーや、インターネット上のオンラインストレージに保存するといった方法で、当面の危機は回避できますが、それぞれの特性や弱点も知る必要があります。またハードディスクとUSBメモリー、DVDなど複数のメディアに保存するといった工夫も必要です。データは、各個人で、また組織で守るというポリシーが必要です。また、活用はデジタルで、保存はアナログで、といった考え方が主流となっていることも知っておくと良いでしょう。
ヘリテージサービス事業部アーカイブ担当 中川 洋
歴史系博物館学芸員として資料の収集・管理や展示・教育業務に携わり、現職に就く。
現在は、企業および学園アーカイブのコンサルティング、プランニング、マネジメントに従事。