日本のアーカイブズの問題点(1)
国の公文書管理法がこの4月に施行されました。この公文書管理法の特色の一つは、従来バラバラだった現用文書と非現用の歴史公文書の管理を一元化したことにあります。
従来、現用文書の管理は総務省、非現用の歴史公文書は内閣府(国立公文書館)と統轄官庁が違うなど、いくつかの要因から歴史公文書の国立公文書館への移管がスムースに行われないという問題がありました。
それが今回、現用から非現用まで文書管理全体の管轄権が内閣府(公文書管理課)に一元化され、またこの法律で各省庁の歴史公文書の移管が義務付けられるなど様々な改善が図られたのです。
さらに国立公文書館の機能が、従前は移管された歴史公文書のみに限定されていたものが、現用段階にある歴史公文書についても専門的な助言や研修を行うことができるようになったのも大きな変化です。
このように国レベルでは、現用文書と非現用の歴史公文書の管理が一元化され、アーカイブズの充実が図られる道筋がついたわけです。
しかしながら、自治体及び民間企業においては、その殆どが現用文書と非現用の歴史的文書の管理がバラバラでつながっておらず、充実したアーカイブズを構築する仕組みができていないのが現状です。
もっと正確にいうと、殆どが現用文書の管理のみで終わっており、恒久的なアーカイブズ機能(施設)を持って、非現用の歴史的文書の管理をきちんと行っている組織は極めて少数です。すなわち社史や自治体史の編纂時にスポット的に古い資料を集めるだけという例が多いのです。
残念ながらこれが日本の現実であり、国際的に見ても大きく遅れているといわざるを得ないのです。
今年も8月15日の終戦記念日前後には、歴史を振り返るテレビ番組が数多く組まれておりましたが、過去に日本が犯した過ちを二度と繰り返さないためにも、歴史がいかに重要かということを思わずにはいられませんでした。
現在を正しく見据え、将来を賢く展望するためには、過去の歴史を学ぶしかありません。そのためには過去の記憶を記録として残すことが必要です。
国のみでなく自治体、企業のレベルにおいても、きちんと組織の歴史を残し、それを活用することが求められています。これこそがアーカイブズの役割なのです。
アーカイブ研究所所長 小谷允志
記録管理学会前会長、ARMA(国際記録者管理協会)東京支部顧問、日本アーカイブズ学会会員、日本経営協会参与、ISO/TC46/SC11(記録管理・アーカイブズ部門)国内委員。
著書に『今、なぜ記録管理なのか=記録管理のパラダイムシフト』(日外アソシエーツ)など。