注目される地方自治体の歴史的公文書
国の文化財審議会は「埼玉県行政文書」11,259点を、国の重要文化財(歴史資料)にするよう文部科学大臣に答申しました。
埼玉県立文書館の HPによれば、この文書群は、明治初年から昭和22年までの県が作成した公文書で、県の基本政策や行政機構を知るうえでの基本資料であり、地域社会が近代化する過程を具体的に伝える重要なものと評価されたとのことです。
奈良県でも、県庁と郡役所で使われた合計6,695点の「奈良県行政文書」を県指定文化財に指定しました。
また、静岡県では、県庁内に新たに「歴史的文書閲覧室」を設け、明治以来の公文書の閲覧を開始しました。
国の公文書が、このたびの公文書管理法制定の動きのなかでにわかに脚光を浴びるなか、自治体の歴史的公文書も、ようやく「日の目を見る」ようになってきま した。
国立公文書館が「地方公文書館」としているものが全国に35館あり、地方の公文書を収集、公開しています。兵庫、岡山、広島など戦災によって戦前の資料の大半を失ってしまった県もありますが、埼玉、愛知、京都、奈良などには膨大な公文書が遺されています。
戦争や災害をくぐり抜けて、明治以来の文書群を脈々と受け継いできた先人たちの不断の努力には頭が下がる思いがします。
しかし、いざこれらを利用するとなると、いろいろな障壁があります。申し込んでから閲覧まで一週間以上かかる文書や、個人情報保護等との関係からか、徹底 したマスキングを施した後でなければ見ることができない文書も少なくありません。
また、利用者サービスについても、例えば複写ひとつをとっても、電子コ ピーができる館、写真撮影ができる館、委託してコピーを後日送ってもらう館と文書館によってまちまちです。
その価値が社会的に認められるようになってきた文書群だけに、地域社会や地域産業の歴史の証人として、より多くの人が活用できるよう、使い勝手のよいアーカイブにして欲しいものです。

歴史系博物館学芸員として資料の収集・管理や展示・教育業務に携わり、現職に就く。
現在は、企業および学園アーカイブのコンサルティング、プランニング、マネジメントに従事。