「レコード」の原義
この7月15日(2009年)に、弊社と東洋経済リサーチセンターの共催で、企業アーカイブ実務セミナーを開催しました。(http://www.shuppanbunka.jp/news/200907_news01.html)
基調講演は、「企業法務の最前線から見た、アーカイブの必要性」と題して、長谷川俊明弁護士にお願いしました。内部統制における記録管理の重要さを数々の事例を交えて力説されましたが、以下の話は、特に我々アーカイブを専門とする者にとっても大変示唆に富むものでした。
曰く、レコード(record)という言葉を調べていくと、語源はラテン語で、"re"というのは何かを取り戻す、行って帰ってくるという意味であり、"cord"の部分はハート、すなわち心であるというのです。「レコード」の本来の意味は、良心を取り戻すことのようです。さらに、レコーダーという言葉には、裁判官という意味もあり、良心に従って記録を残していく歴史の記録者がレコーダーである、ということでした。
突き詰めれば、「レ・コード」とは、「心の記憶を呼び覚ます」「心に帰る」という意味があるのでしょう。
私たちが普段何気なく使っている、「レコード」という言葉に、こういう原義があるのかと驚くと同時に、翻ってわが身に照らして、普段こういう気持ちで記録に接しているか、と反省しきりでした。
ISO15489では、記録の要件として、真正性、信頼性、利用性、完全性を掲げています。良心に従って記録を残せば当然これら4つの性質が備わるので しょうが、私たちはともすれば、都合の悪いことを隠蔽したり、故意に改竄したり破棄したりして、このようなことを黙認する風潮が不祥事の温床になっていま す。
長谷川弁護士は話の最後に、戦時中の外国人強制労働の裁判の弁護にあたり、当該企業が記録を持っていないという事実に鑑みて、都合の良い悪いに拘わらず、記録化というのはどうしても必要なことだと痛感した、と語られていました。
戦後補償には時効がないと言われます。良心に従って記録を残すことを怠ればそのつけが廻ってくるという好例だと思われました。