資料の保存環境
紙や写真、フィルム類は、しっかりと管理すれば長期保存可能な頼りになる媒体ですが、管理が不適切だとあっという間に劣化し、使い物にならなくなります。
日本は高温多湿ですので、押入れや閉め切った倉庫など風通しの非常に悪いところに長期間保存すると、衣類と同じように虫食いやカビといった被害を受けます。
また、写真やフィルム類は湿度に非常に弱く、多湿な環境に長期間放置すると、はさんでいるアルバムや重ねて保管した他の写真等と接着したり、退色、変色が進行したりしますので要注意です。
インクや紙の素材、複写の方式等によっては劣化,が非常に速いため、保存に際し対策が必要な資料もあります。
例えば、明治から大正期の公文書の複写に多用された、メチルバイオレットを用いた「こんにゃく版」、昭和20年代ごろから現れる「青焼き」や感光紙を用いたコピーは、光による影響を受けやすいので、変色が早く、場合によっては全く読めなくなります。これらに関しては、中性紙製の箱に収めるなどして光を遮断し保存する必要があります。
また、インクのにじみ止めに硫酸アルミニウム等が用いられた酸性紙は、時間が経つと、変色、硬化し、触るだけでぼろぼろと壊れるようになります。長期保存のためには、劣化のスピードを緩めるために、中性紙や弱アルカリ性の包材を用いて保存するとともに、薬剤を用いて脱酸化処理を行う必要があります。
このように資料を適切に保存し、間違いなく後世に伝えていくためには、状況に応じた配慮が必要です。すでに劣化が進行しているものに関してはケアを施しつつ、適切な保存環境を整えることが大切です。