電子メールの管理と保存
アメリカ合衆国政府で長らく文書管理に携わって来た方の講演を聞く機会がありましたが、大きな課題のひとつとして電子メールの管理と保存の問題を指摘されていました。
現在、ビジネスの場でも、プライベートでも、相当重要な案件も含め、電子メールでやりとりされていますが、その重要性の割りに、その管理や保存はきわめて杜撰で、ないがしろにされているという現状が、情報管理の先進国であるアメリカにおいてもあるようです。そもそも、電子メールは管理すべきデータと認識さ れていない、またそれが個々人の管理の範疇にあることに問題の根源があるようです。
日本においても、電子メールは、いまや組織の内外を問わず連絡ツールの中軸となっていますが、その管理は受発信した当人に任されているというのが実情ではないでしょうか。電子メールの整理・分類(条件による振り分け)やバックアップ(コピーの保存)機能は、どのようなメールソフトにも付属しており、簡単にできることなのですが、ルールを決めて保存したり、情報資産として活用したりしているという話はあまり聞きません。せいぜいC.C.で、関係者内で共有する程度です。あくまでも「個人のもの」という意識が強いようです。
しかし、実際には会社としての約束事などを相互に確認しあうのに使っていたり、重要文書を送受信したりしているわけですから、組織として管理する必要があります。
また、メールには証拠能力も認められており、法的にも重要なものであると言う自覚が必要です。最近の企業不祥事では、検察は本社の資料を押さえる前に、まずメールサーバを押さえる例があった程です。業務用メールは必ず業務用メールアドレスで受発信する、といったメールの受発信に関するルール作り(社外にいるときにプライベートなアドレスでやり取りをする事例が多く見られます)、サーバー内のメールデータを定期的にバックアップして別メディアで保存すると いった保管措置、常時監視をして、マナーなども含め不適切なものについては指導していくということも必要になってくるでしょう。

ヘリテージサービス事業部アーカイブ担当 中川 洋
歴史系博物館学芸員として資料の収集・管理や展示・教育業務に携わり、現職に就く。
現在は、企業および学園アーカイブのコンサルティング、プランニング、マネジメントに従事。