学園アーカイブの時代
昨今の大学の変貌振りには目を見張るものがあります。新学部や新コースの設置、キャンパスのリニューアル、短大や女子大、単科大学の四年制総合大学化などが全国で進められています。18歳人口の減少、大学全入時代を迎えて、各大学は個性の打ち出し、いわゆる「差別化」に力を入れています。企業における C.I.同様、U.I.(University Identity)を明確にしようという試みです。
時代の要請にこたえる新学部の設置や、最新鋭の設備の導入など「新しいこと」を進める一方で、建学の理念や、創設者の思想、培ってきた伝統など「歴史的なもの」を、受験生や社会一般にアピールしていこうという動きも盛んになっています。このようなU.I.の根幹をなすのが「学園アーカイブ」です。
学園アーカイブ研究の第一人者である寺﨑昌男先生によれば、欧米の大学には「MLA」すなわち、Museum・Library・Archivesが必ずセットであるそうです。日本の場合、大学設置基準の関係で図書館は必ずありますが、博物館を自前で持っているのはごく少数で、学園史料館(室)を持ってい るところは、さらに少ないと思われます。しかし、近年になって学園アーカイブを構築しようという大学が増えており、弊社にもご相談が寄せられています。
古色蒼然たるアルバム、墨痕鮮やかな手書きの文書、校章バッチや行事の記念品などの実物資料―ここに学んだ人たちの青春の輝きをうかがわせる宝の山が学園の一角にあります。これらを、いかに次代へ継承するか、また、いかにこれらを活用して学園の歴史と伝統、理念をアピールするか、これが、今まさに問われています。
弊社では、まず損傷した資料の補修と、劣化防止措置をとることをご提案し、あわせて総目録作成による資料の体系化をお奨めしています。さらに、活用をはかるため、必要な資料の電子化・複写・複製の作成を承ると共に、史料館の開設やリニューアルについてのご相談も承っています。もちろん実際の各種作業のお手伝いも承っております。これらの業務を通じて学園の歴史に直接触れると、いにしえの学生や教職員の熱い息吹を感じることができます。

ヘリテージサービス事業部アーカイブ担当 中川 洋
歴史系博物館学芸員として資料の収集・管理や展示・教育業務に携わり、現職に就く。
現在は、企業および学園アーカイブのコンサルティング、プランニング、マネジメントに従事。