映像資料の保存(1) ― フィルムの危うさ
先日、京都文化博物館で開催された「第6回 映画の復元と保存に関するワークショップ2011」に参加しました。
このワークショップでは、フィルムを扱うアーカイブズ(保存機関)や関連企業、NPO法人等の活動による、映画の復元と保存活動の報告が行われました。
また、フィルムの検査と取り扱いについての実習なども行われました。
映像に携わる各企業や団体、フィルムを収集・保存している博物館や美術館の学芸員、一般の映画ファンなど、参加者同士のネットワークを広げる、たいへん良い催しでした。
このワークショップを通して、映画フィルムのさまざまな問題は、劇場用だけでなく、企業で保存されている映像資料や、ホームムービーとも共通する問題であるということを改めて感じました。
今回は、映画フィルムの化学的性質とその保存問題について紹介します。
1950年代まで映画フィルムのベース面には「ナイトレート」という可燃性の素材が使用されていました。
ナイトレートフィルムは、耐久性とスクリーンでの黒色の再現力に優れていましたが、引火時に強い燃焼性を持つだけでなく自然発火の危険性もありました。
そこで改良されたのが「アセテート」をベースとしたフィルムです。
8mm、16mmフィルムは当初よりアセテートベースが使用されていました。
ナイトレートと異なり燃えにくいのですが、高温多湿の状態で保管されると劣化が急速に進んでしまう欠点があります。この劣化は「ビネガーシンドローム」と呼ばれており、強烈な酢酸臭を放ち、一度劣化すると二度と元に戻りません。
劇場用映画のみならず、企業やご家庭で保管されているフィルム類に、少しでもこのような臭いがしたら要注意です。
1990年代に入るとポリエチレンテレフタートというベース素材が導入され、現在の上映用、複製用フィルムに使用されています。
近年では、デジタルシネマも増加傾向にあります。
フィルムの安定的な保存のために大事なことは、「低温度・低湿度」の環境条件を維持することです。
室温4~10度、相対湿度20~40%の状態に維持できる倉庫に保管することがベストとされています。
また、保存の際は、容器(缶)の素材や乾燥剤にも注意を払う必要があります。

ヘリテージサービス事業部アーカイブ担当 小根山 美鈴
都内の大学史編さん室、独立行政法人の研究所でアーカイブズの業務に従事の後、現職に至る。日本アーカイブズ学会会員。