音源の電子化
紙資料以外で、写真や映像に次いで電子化の要望が多いのが音源です。
ビデオが普及する前は、イベントの様子や社長の年頭訓示などをテープで録音して、記録していたところが少なくありません。
全国に事業所を持つ企業では、それをレコードにして配布しているところもありました。
古いメディアは、「オープンリール」と呼ばれる文字通り裸の状態の磁気テープをセットして録音・再生するもので、テープレコーダーは「ポータブル」タイプでも一抱えもある巨大で重いものでした。
1960年代からカセットテープの時代を迎えます。
カセットテープは安価で取り扱いが簡単なので、ラジオとセットになった「ラジカセ」などの形で広く普及しましたが、音質があまり良くないのと、時間が経つとテープの劣化により伸びたり、雑音が入ったりという問題を生じます。
私が担当した古いオープンリールテープでは、裏面の音声が混入してくる事例がありました。一刻も早いバックアップ、電子化がのぞまれる媒体のひとつです。
音源の電子化は、もとの音源を「mp3」「wma」(Wikipedia参照)などと呼ばれるデジタル形式に変換して、Windowsのメディアプレーヤーなどで再生できるようにします。
電子化の作業は、再生可能な機器とICレコーダーがあれば、比較的簡単にできます。
相当古い機器でも、出力端子の規格は今と変わらないので、もし手元にあれば試してみる価値があります。
さすがにオープンリールのテープレコーダーは市販されていませんので、専門業者に依頼するのが一般的です。
2000年代から、「iPod」に代表される超小型軽量のデジタルオーディオプレーヤーが主流になりました。
これらは、もとよりデジタルデータで、パソコンでほかの文書ファイルなどと同じ感覚で管理できるので何かと便利です。
デジタルオーディオプレーヤーの普及に伴って、1990年代にカセットテープに代わって市場を席巻したMD(ミニ・ディスク)は衰退しており、プレーヤーも店頭から消えつつあります。
それほど古いものではないのですが、一刻も早くほかのメディアに移すことをお勧めします。

ヘリテージサービス事業部アーカイブ担当 中川 洋
歴史系博物館学芸員として資料の収集・管理や展示・教育業務に携わり、現職に就く。
現在は、企業および学園アーカイブのコンサルティング、プランニング、マネジメントに従事。