映像の電子化
米国イーストマン・コダック社の経営危機は、同社がデジタルカメラ開発の先駆者でありながら、その普及の早さに対応できなかったことが原因と報じられています。
写真や映像の世界でのデジタル化の波は、開発や販売に直接携わっている当事者にも予測がつかないほどの勢いで進んでいることを、改めて知らされました。
家庭や企業での映像の8mm・16mmというフィルム文化は、1980年代後半からビデオにとって代わられ、このビデオの規格も、長らくVHSの時代が続きましたが、2000年代からDVDやHDDへと移行してきました。
VHSを開発したビクターは2007年にVHSビデオ事業から撤退、昨年の地デジ化でVHSの衰退は決定的なものになりました。
しかし、まだ多くの、また多彩な映像メディアが、家庭や企業、学園の中に眠っており、これらの貴重な情報資産の次世代での活用をどうするか、が課題となっています。
フィルムは、放置しておくと酸化して酢酸臭を発するようになり、加速度的に劣化が進みます。またビデオテープはカビが発生しやすく、カビによるテープの固着で再生不能になることが、たびたびあります。
また、メディア自体はなんとか残っても再生機器がなくなってしまえば、永遠に見られなくなってしまいますから、まずは手を打っておく必要があります。
映像の電子化は、それぞれの専用の再生機器を使用しないと見ることができない映像を、MPEG2、DVフォーマット形式、WMV形式といった電子ファイルに変換してDVDやブルーレイなどのメディアに格納するのが一般的です。
DVD-Videoでは、VOB(ヴイオービー)というファイルフォーマットにして、映像をはじめ音声、字幕、メニューなどの情報をひとつのオブジェクトにして格納します。
この「電子化」により、パソコンや家庭用のDVDプレーヤーで映像が再生でき、複製なども比較的簡単にできるようになります。メディアの耐久性の問題やソフトウェアの将来動向に不安がないとはいえませんが、現段階ではこの方法が価格も安く、信頼性も高いといえます。

ヘリテージサービス事業部アーカイブ担当 中川 洋
歴史系博物館学芸員として資料の収集・管理や展示・教育業務に携わり、現職に就く。
現在は、企業および学園アーカイブのコンサルティング、プランニング、マネジメントに従事。