研究関係記録のアーカイブ
―山中教授のノーベル賞受賞から
―山中教授のノーベル賞受賞から
山中伸弥京都大学教授のノーベル生理学・医学賞受賞が大きく報道されています。自然科学分野における研究者や学生にとって大きな希望をもたらす受賞であり、一般の人々にとってもたいへん明るい話題となりました。
2010年に発足し、山中教授が所長を務める京都大学iPS細胞研究所(CiRA)では、世界初のiPS細胞に特化した先駆的な中核研究機関として基礎研究から応用研究を推進している、いわば情報の宝庫です。
また、同研究所には「iPS細胞関連知財管理連携体制」のもとに特許獲得・その管理に力を入れ、同じ建物の中で研究者と特許担当者が密接に連絡を取り合える体制を構築していることも特徴的です。
このように、研究および研究にまつわる管理体制の一環として、研究関係の記録や知財関係の資料、事務的な資料を包含したアーカイブの体制構築にも是非力を入れてほしいと思います。
自然科学系のアーカイブズについては、既に高エネルギー加速器研究機構、自然科学研究機構、分子科学研究所、核融合科学研究所などの大学共同利用機関において、アーカイブズ資料情報を共有するためのデータベース化が進められています(※1)。
アーカイブズの学界では、学術研究のアーカイブズの意義として研究の過程や成果に関する検証を可能にすることを挙げています。
つまり、一部で論文等におけるデータの改ざんなどの不正行為が発覚している中で、日常業務や実験等の記録、すなわち研究過程に生じる記録を残すことが、「オリジナル」な研究であることを証明する材料になるのです。
また、研究経費を提供する政府や各種機関に対する説明責任を果たすための前提としても、このことは求められています。
CiRAには所内に知財管理室があることなどから、iPS細胞に関連する研究や周辺情報などあらゆる情報が物理的に集約できる、あるいは情報を集約しやすい環境であることも手伝って、組織的なアーカイブ構築が比較的進められやすいと考えます。
研究活動から網目状に生じる情報を束ね、活用できる仕組みができれば、メリットが大きいはずです。
様々な立場からこの研究を支え、科学の発展に寄与できればと考えます。
※1 総研大基盤連携資料情報共有化データベース

ヘリテージサービス事業部アーカイブ担当 小根山 美鈴
都内の大学史編さん室、独立行政法人の研究所でアーカイブズの業務に従事の後、現職に至る。日本アーカイブズ学会会員。