MLA連携よりRMA連携を
最近特に話題になることが多い「MLA連携」ですが、元を質せば20年位前から言われだしたようです。ご承知のようにMLAのMはMuseum(博物館)、LはLibrary(図書館)、AはArchives (公文書館)です。
これらはいずれも文化的情報資源を収集、蓄積、提供する公共機関であるという共通点を持ち、情報資源のアーカイブ化等の課題を共有しているところから、近年、連携の重要性についての認識が高まっています。
確かに「MLA連携」は重要なことであり、進めるべきだと思います。
しかしながら私は、文書管理・アーカイブズの分野においてより重要なことは、「MLA連携」ではなく「RMA連携」だと思います。
「RMA連携」と言っても、きっと何のことだかお分かりにならないでしょう。
それもその筈、これは私の造語であり、初めて言う言葉ですから当然です。
実は「RMA連携」のRMはRecords Management 、すなわち現用の文書管理のことであり、AはArchives、非現用の歴史文書の管理です。
私の主張は、今われわれにとって大事なことは現用の文書管理(RM)と非現用の歴史文書の管理(A)がもっと緊密に連携すべきだということです。
日本では従来から、この両者の連携、つまり現用から非現用への移管がうまく行っていませんでした。これを私は「現用と非現用の断絶問題」と表現しておりました。
公文書管理法の制定により、法的にはこの両者が繋がったのですが、現実には国の場合もまだうまく行っているとは言えません。
最近出た公文書管理法施行初年度(2011年度)の実施状況報告書(注)によりますと、各省庁から国立公文書館への移管率は0.7%でした。
これは公文書管理法制定前の数字(2008年度)と全く同じです。
法施行1年目ということを割り引いたとしても、先進国の移管率3~5%から比べるとかなりの低さです。
国の例を話しましたが、実は自治体、企業となるともっとひどい筈です。
なぜなら文書管理規則で歴史文書の現用から非現用への移管をきちんと義務付け、実行しているところは殆どないからです。
私が「RMA連携」がより重要だという意味がお分かり頂けましたでしょうか。親戚(博物館・図書館)と仲良くすることも結構ですが、まずは家族(現用・非現用)が仲良くすべきだと言っているのです。いかがでしょうか。
(注)「平成23年度における公文書等の管理等の状況について」
(内閣府公文書管理課)
http://www8.cao.go.jp/chosei/koubun/houkoku/heisei23nendo_houkoku.pdf

アーカイブ研究所所長 小谷允志
記録管理学会前会長、ARMA(国際記録者管理協会)東京支部顧問、日本アーカイブズ学会会員、日本経営協会参与、ISO/TC46/SC11(記録管理・アーカイブズ部門)国内委員。
著書に『今、なぜ記録管理なのか=記録管理のパラダイムシフト』(日外アソシエーツ)など。