松本市文書館訪問記
先日、機会があり長野県松本市の文書館を見学、小松芳郎館長から色々とお話しを聞くことができました。
松本市文書館は、松本市史編纂のために収集された文書史料を保存、活用する目的で設立されたもので、平成10年10月に開館されました。
市史編纂事業自体は平成4年に始まり、市制施行90年周年事業として平成10年3月、全5巻11冊の「松本市史」が刊行されています。
小松館長は当初から市史編纂事業に参画しておりますが、文書館が市史刊行とほぼ同時に開館できたのは、当初から文書館開設を企画し、市史編纂のための文書史料を使いやすいように整理して来たからだと言います。
また市の三役に文書館設立の許可をもらうに当たっては、国及び地方公共団体に歴史的資料として重要な公文書の保存を義務付けた「公文書館法」(昭和62年制定)を最大限に利用したとのことです。
施設は松本市郊外の公民館を丸ごと転用することで予算を押さえています。開館に合わせて「松本市文書館条例」を制定しましたが、条例化についても、「法律に則って」という説得方法が大きな効果を発揮したということです。
やはり法律の力は大きいということを実感したそうです。また条例があることが、その後、市内外に文書館の存在をアピールするのに大変役立ったと言われていました。
現在の収蔵資料は、市制以前の旧町村行政文書:約7万6000点、寄贈・寄託された地域資料:約5万点、複製資料:約8万点、書籍:9000冊、現用文書:約3000点などとなっています。
現在、松本市文書館では新築移転の計画が進行中で、現在の倍の規模となる新館が来年(平成26年)6月に完成、9月にはオープンする予定となっております。それに合わせて職員も3~4名増員する計画だということでした。話を聞いて強く感じたのは、自治体の公文書館は小松館長のような、アーカイブズに対する並外れた情熱と識見を有する人物の存在と理解ある首長の二つが揃ってはじめて可能になるということでした。

アーカイブ研究所所長 小谷允志
記録管理学会前会長、ARMA(国際記録者管理協会)東京支部顧問、日本アーカイブズ学会会員、日本経営協会参与、ISO/TC46/SC11(記録管理・アーカイブズ部門)国内委員。
著書に『今、なぜ記録管理なのか=記録管理のパラダイムシフト』(日外アソシエーツ)など。