地方公文書館の奮闘
早いもので、一年を振り返る時期になりました。
私にとって、一番思い出深いのは、10月に富山を訪れたことです。
JR北陸線沿線では新幹線開業へ向けての工事が急ピッチですすめられており、富山駅も工事の真っ最中でした。
駅からバスで15分ほどのところにある富山県公文書館は、県立図書館や県埋蔵文化センターに隣接した、街の喧騒から離れた静かなところにあり、史料と向き合うのには絶好のロケーションです。
折りよく特別企画展「ふるさと富山130年のあゆみ」を開催中でした(11月3日に終了しています)。
文書館のロビーを利用した、それほど広くないスペースでしたが、なかなか見ごたえのある展示でした。
富山県は、明治16年(1883)に、石川県から分県する形で置県されています。 度重なる水害を克服して電源開発を進め、戦災からの復興を経て、今日一大工業県に成長した県の近代史を、文書館で所蔵している史料を軸にビジュアルに展示が展開されていて、たいへん理解が深まりました。
展示だけでなく、20ページ建ての立派な解説書(展示図録)も無料で配布されていて、意気込みが感じられました。
また、「県域の変遷をふり返ろう」と題して、各時代の県域図に、当時の県印(四角い公印、レプリカ)を押してもらう、といった体験コーナーもあって、よく工夫されていると感心しました。
公文書館は、まだまだ一般の人にはなじみが薄く、利用者も極めて少ないのが現状ですが、このような各地方での地道な史料の発掘や、展示活動が、アーカイブズの価値をいっそう高め、より多くの人にその意義を知ってもらう好機になると思います。
今後のいっそうの奮闘に期待し、また私たちも良き応援団になりたいと思いました。

ヘリテージサービス事業部アーカイブ担当 中川 洋
歴史系博物館学芸員として資料の収集・管理や展示・教育業務に携わり、現職に就く。
現在は、企業および学園アーカイブのコンサルティング、プランニング、マネジメントに従事。