分類を考える 1 ~形態別分類と種類による分類~
歴史資料保存機関であるアーカイブズにおいては、資料目録を作成した後に「分類」を設定することにより、利用の利便性を向上させようとしてきました。分類とは資料に「検索のためのキーワード」を付与することであり、アーカイブズにおける整理作業の仕上げの部分にあたります。分類の方法論には、これまで多様な蓄積がありますが、それぞれに長所・短所があるため、分類の方法に悩まれているアーカイブズも少なくありません。そこで今回から3回にわたって、私が担当するコラムのなかで分類の方法について考えていきたいと思います。初回は、現在も多くのアーカイブズで使われている形態別分類・資料の種類による分類の歴史を紐解き、その長所と短所を考えていきます。
形態別分類とは、その名の通り歴史資料の形態(紙の使い方)による分類で、古文書の分類方法として広く使われてきました。なぜ歴史資料を形態で分類することになったのでしょうか。それは第一に、歴史資料が形態により意味が異なると考えられていたからです。したがって、特に古文書を研究する古文書学という分野では、形態が非常に重要視されています。第二に、1960年代ごろから全国の自治体で行われた歴史編纂事業(自治体史編纂事業)が開始されたからです。自治体史編纂事業は限られた時間で行うため、収集した多くの古文書を効率よく活用できることが求められていました。そこで考えられたのが、歴史資料の形態に意味があるという古文書学の理論を前提として、収集した歴史資料を形態別に分類し、それを形態ごと(分類ごと)に配架するという方法でした。つまり形態別分類は、目録作成段階で資料を形態ごとにわけることにより、資料の管理・利活用が容易になるという思想から生まれたものでした。
一方、資料の種類による分類とは、資料の種別(紙・もの・書籍・写真など)により分類する方法です。この分類は、現在でも多くのアーカイブズで採用されています。資料を種別により分類するのは、管理上の利便性を考慮しているからです。つまり、同じ種類の資料が同じ場所に整然と並んでいれば管理しやすいという考え方から生まれたものであり、形態別分類の発想に通じるものがあります。
しかし、形態別分類・資料の種類による分類には短所も存在します。それは、資料を「形」で物理的に分けるため、たとえば封筒に一括されていた・袋に入っていたなど「意図的な」まとまりで歴史資料が保存されていた場合、その情報を目録に記録しなければ資料の本来もっていた意味が損なわれてしまうという点です。つまり、資料を物理的に分類するという行為は、アーカイブズの原則のひとつである「原秩序尊重」に反することになってしまうのです。ただし、資料を「もの」として管理するには、形態別分類・資料の種類による分類ほど効率的な考え方はありません。次回は、内容分類について触れていきたいと思います。

ヘリテージサービス事業部アーカイブ担当 中村 崇高
県立の公文書館職員として公文書の評価・選別、古文書の整理、展示業務などに従事の後、現職に至る。