「『南満洲鉄道株式会社』の記録管理」
2017年は、「南満洲鉄道株式会社」(以下、満鉄)が「満洲」(現在の中国 東北部)で営業を開始してから111年目にあたります。 1906年に設立が決定し、翌年4月に鉄道事業などを担う国策会社としてスタ ートします。 国策会社といえども会社組織であるため、満鉄も膨大な文書の管理に苦労して いたようです。
ここでは、松田和夫編『満鉄の文書』(満鉄社員会、1942年)※1に着目し、 満鉄の記録(レコード)が記録史料(アーカイブズ)として保存される過程を 紹介していきます。
1931年6月、満鉄は『社内文書管理規程』を制定します。現用文書(レコード) は同規程により管理すること(第1条)、文書は甲種・乙種・丙種に区分される ことが明記されていました(第2条)。
甲種にはトップマネジメントにかかわる総裁の決裁文書など、乙種にはミド ルマネジメントにかかわる部長・所長の決裁・供覧文書が該当しました。
また、現用文書は記号と番号を組み合わせた資料番号で管理し(第26条)、 記号は部・課などの頭文字、番号は年代のほか類別・件名別・文書番号を記 入しました(第27条)。
具体的には「総文記01第35号1の1」という複雑な番号が用いられ、 「総文記」は総裁室文書課記録係を意味しています。
すべての現用文書を保存することは不可能であるため、満鉄は「文書管理保 存規程」※2において保存年限を設定します。年限は1・5・10・20年のほかに 永年と定められ(第3条)、1年以外の文書は本社では総裁室文書課、本社以外 では主管部署で保管されます(第2・3条)。
保存期限が経過した文書は、目録を作成して主管部署と合議し廃棄されまし た(第26条)。総裁室文書課に保存されたのは永年文書であり、これが満鉄の アーカイブズとして利用に供されました。
このように、総裁室文書課は、非現用文書の一時的な保管および廃棄、アー カイブズの閲覧業務なども担当していました。
以上、満鉄のレコードマネジメントとアーカイブズの関係を見てきましたが、 アーカイブズの現場で注意しなければならない点があります。
第一に、文書管理と番号の関係です。満鉄の資料番号を導入すると、部署が再 編されると新たな番号が付されるため、アーカイブズを管理するには不向きです。 そのため、資料番号に意味を持たせるのではなく、できるだけ簡単な番号、た とえば連番で管理することをおすすめします。
第二に、記録の移管のみならず廃棄する場合にも、目録を作成します。なぜ なら、廃棄について説明責任を果たす必要があるためです。現用文書の廃棄は 資料整理のタイミングでもあるため、お困りの際には一度弊社にご相談くださ い。
※1 アジア経済研究所図書館所蔵(請求記号K-Ja/002/Ma1)
※2 作成年は未詳。ただし、総裁室文書課は1917年3月に業務を開始したた め、これ以降に成文化されたと考えられます。

ヘリテージサービス事業部アーカイブ担当 白田 拓郎
自治体や図書館において公文書・古文書の整理に従事し、現職に至る。現在はアーカイブ部門において資料整理を担当。