活用可能な目録作りをめざして
これまでに企業や学校などのアーカイブズにおいて、多くの資料目録を拝見しました。いずれも、それぞれのアーカイブズの特徴をふまえた目録に感心するばかりです。弊社ではアーカイブサポートの一環として資料の目録作成を担当させて頂いております。予算や期間に応じて、概要目録や詳細目録を作成しています。前者は、箱あるいはファイル単位に目録を作成する方法で、箱の表書きやファイルのタイトルを採録します。一方、後者は、資料を1点ごとに資料番号、表題、タイトル、作成、受取、作成年などの情報を入力するという方法です。
かつて筆者は、メリーランド州の米国国立公文書(The U.S. National Archives and Records Administration)(※1)において何度か資料調査に参りました。まず、驚かされるのは日本のような資料目録が存在せず、資料ごとに付されたRecord Groupのファイルが置かれているだけです。請求時には、Entry#、stack area、row、compartment、shelfを請求票に記入し、一度に数十箱の資料を請求することが可能です。詳細目録がないため利用者は、メモ・目録を作成しながら資料を閲覧しなければなりません。個人の研究分野により必要な情報が取捨選択、あるいは必要な事項を加筆するなど、利用者オリジナルの目録が出来上がります。
一方で、アーカイブズの場合には、不特定多数の利用者を想定し、内容を必要最低限にとどめた目録を供することになります。目録作成者の主観が入り込みすぎて、情報過多の目録を目にすることがあります。作成者にとっては必要かもしれませんが、ほかの閲覧者にとっては不必要な情報であることに注意しなければなりません。したがって、目録とは利用者に適切な情報を提供し、資料を探し出すためのツールに過ぎないと言えるのではないでしょうか。
(※1)同館の利用方法については、下記のサイトをご参照ください。
九州大学付属図書館 「アーカイブ情報あれこれ: 米国国立公文書館IIの実践的利用法」(2018年6月27日時点)

ヘリテージサービス事業部アーカイブ担当 白田 拓郎
自治体や図書館において公文書・古文書の整理に従事し、現職に至る。現在はアーカイブ部門において資料整理を担当。