社史制作とアーキビストの役割
弊社は、創業35周年を契機に社史『Learn from Yesterday Live for Today Hope for Tomorrow』を上梓いたしました。毎日の朝礼において社史を輪読し、会社の理念や活動の経緯などを再確認する時間が設けられています。
このように、社史は社員が利用するほか、社外つまり公共図書館などにおいて広く読まれています。私の場合、会社の業務以外でも社史を利用します。現在、東京本部には3名のアーキビストが在籍し、いずれも大学で講義を受け持ったことがある研究者です。私の専門領域は、近代以降の日本経済史です。ある地域の経済や産業の発展や衰退を調べようとするとき、自治体史や新聞、そのほか社史をよく活用します。以前に私が担当したコラムでは、日系商社である三井物産のことを取り上げました。三井物産の社史として、『稿本三井物産株式会社百年史』(1978年)、『三井事業史』(1971~2001年)などが刊行されており、いずれも著名な経済史および経営史の研究者が執筆したものです。
それでは、いざ社史を制作しようとするとき、何が必要でしょうか。会社の歴史を記録した資料がなくては、何も始まりません。必要な資料としては、会社の経営状態を記した営業報告書や有価証券報告、会社の規則を成文化した定款、年次報告書などがあげられます。こうした基本的な資料の有無が、社史の成否を分けることになります。
アーカイブズと聞くと、古い資料を整理する印象を持たれる方が多いかもしれません。弊社では社史制作の前段階に、アーキビストが資料収集をアドバイスさせて頂くことが可能です。事前に資料を取捨選択することで、効率的に収集できるようになります。その判断基準を示すことができるのは、これまでの研究活動や資料整理の経験が豊富なアーキビストと言えます。
ヘリテージサービス事業部
アーカイブ担当
白田 拓郎