開港150年に沸くみなと横浜のアーカイブ
今年は、横浜・函館・長崎が開港(安政6年・1859年)してから150年の節目となり、各地で盛大に記念行事が取り組まれています。なかでも、横浜では、開港150周年記念テーマイベント「開国・開港Y150」が先日開幕し、たいへんな人出で賑わっています。
幕末まで、小さな漁村にすぎなかった横浜は、開港以来めざましい発展を遂げ、今日では市としては日本最多である350万の人口を誇る大都市に成長しています。この成長の軌跡を保存・公開している機関のひとつに「横浜開港資料館」があります。日本史の教科書や資料集に掲載されている開国当時の錦絵や写真の多くは、この資料館の所蔵です。
開港資料館は、英語名を「Yokohama Archives of History」と称し、文字通り横浜におけるアーカイブの殿堂です。ここには、幕末から昭和初期までの横浜に関する政治・経済・文化など幅広い分野の歴 史資料約25万点が収蔵されています。これらは、単に「横浜の」というよりも、日本の近代化の軌跡を雄弁に物語る第一級の資料群です。一部は同館ホームページでも見ることができます。
日本において、まだアーカイブの概念が定着していなかった1981年(昭和56年)というきわめて早い時期に、アーカイブの保存・閲覧サービスと共に博物 館的な展示機能を備えた歴史資料館を開館させた先見性は、称賛に値するものと言えるでしょう。資料館の敷地は日米和親条約締結の由緒ある地に接し、敷地内 には昭和初期に建築された旧英国総領事館の建物が現存しています。これも貴重な建築遺産です。
資料館の界隈は開港時の市街中心部であり、今も近辺には大正から昭和初期の重厚な建物が数多く残っています。威風堂々たる日本郵船歴史博物館や、横浜商工奨励館の建物を活用した日本新聞博物館なども必見です。
開国150年の今年、お祭り騒ぎで終わるのではなく、当時の人たちが遺した資料や、それを受け継いできた人たちの思いにも是非ふれていただきたいと思います。

歴史系博物館学芸員として資料の収集・管理や展示・教育業務に携わり、現職に就く。
現在は、企業および学園アーカイブのコンサルティング、プランニング、マネジメントに従事。