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アーカイブコラム

2010年2月12日

●発行者:出版文化社アーカイブ事業部
周年記念映像、資料の電子化、Web社史、データ時代に対応した周年記念コンテンツの制作

鎮魂のアーカイブ

少し前の話になりますが、琉球新報社が沖縄戦から60年の節目に『沖縄戦新聞』を作成し、本紙に折り込んで配布しました。『沖縄戦新聞』は、戦争を知らない世代の同紙記者が、沖縄戦について現在の情報と視点、体験者の証言などを盛りこんだ新聞です。刻一刻変わる戦況やできごとを、昨日のことにようにライブ版で伝える企画もので、全14号が刊行され60頁というボリュームがあります。

沖縄戦を三ヶ月間の地上戦に限定するのではなく、軍による住民の根こそぎ動員や、背景にあるさまざまな事情など、県民が戦争に巻き込まれていく過程を描くことで、沖縄戦の実相に迫ろうとしたものです。空襲や逃げ惑う住民たちの生々しい写真、米軍の侵攻や部隊の配置などのわかりやすい図表、また見出しやリードが良く工夫されていて、当時の状況がリアルに伝わり、たいへん迫力ある紙面になっています。
ほんとうにあのときにこういう新聞が出ていたなら、真実が国民に知らされていたなら、戦局の展開は違うものになっていたことでしょう。

もとは本紙折り込みの特集記事でしたが、反響が大きく、全号まとめて増刷され箱入りで販売されています。2005年度の新聞協会賞も受賞しました。

同社HPには、「新聞は戦前、戦中の一時期、戦意高揚に加担した負の歴史を背負っています。琉球新報も例外ではありません。“戦(いくさ)のためにペンを執らない”。戦後60年の今、報道の現場に立つ私たちは、この企画を通してあらためて誓いたいと思います」とあります。書きたくても真実が書けなかった、あの戦争に加担したという悔恨と苦悩、それを抱えて散っていった新聞人たち。それらへの鎮魂の思いがこめられているようです。

こういった取り組みは、過去の事実を現代の視点から見つめなおし、馴染み深い「新聞」スタイルで紹介するという新しい試みとして評価できると思います。また、当時は明らかにならなかった事実をひとつひとつ掘り起こして丁寧に再構成をしてライブ仕立てにするという手法も、アーカイブのひとつのあり方といえるでしょう。

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ヘリテージサービス事業部アーカイブ担当 中川 洋

歴史系博物館学芸員として資料の収集・管理や展示・教育業務に携わり、現職に就く。
現在は、企業および学園アーカイブのコンサルティング、プランニング、マネジメントに従事。

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