CSR(企業の社会的責任)が ISOに
先進的な企業では、すでにCSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)に取り組んでいるところが数多くあります。 しかしながらCSRの概念はあいまいで、それぞれの企業の取り組み方はかなり違っているのが現状でした。
そのCSRが近く国際標準化機構(ISO)により規格化され、その概念が明確化されることになりました。ISOは2004年からCSRの規格案を検討してきましたが、現在107の加盟国に対し最終案の賛否が問われており、11月には新規格「ISO26000」として発効する予定となっています。
新規格案では、企業だけでなく,公的機関、非営利組織(NPO)などすべての組織が対象になっているのが特徴です。しかも企業の場合、自社だけでなく取引先も評価の対象となるため、企業が社会的責任を全うするには取引先を選別したり、改善を促したりすることが必要になります。
最終案はCSRの基本的な項目として7つの原則を打ち出しており、それらは説明責任、透明性、倫理的行動、利害関係者の尊重、コンプライアンス、国際行動規範の尊重、人権尊重です。
倫理的行動の中には「内部通報制度の確立」や「動物保護への配慮」などが盛り込まれています。
また社会的責任を果たすために実行すべき課題として、7つの主要課題を掲げており、それらは組織統治、人権、労働慣行、環境、公正な事業慣行、消費者問題、地域社会への参画となっています。
CSRの国際規格が制定され、グローバルスタンダードとしてその内容が明確化されることの意義は大きなものがあるといえましょう。
いずれにしてもCSRが記録管理をベースにしていることは間違いなく、今後すべての組織においてより良い記録管理の仕組みを確立することが求められることになります。なぜならCSRの基本は、7つの原則や7つの主要課題に関し、組織が従業員や取引先、地域社会などの利害関係者に対してコミットメントすることであり、コミットメントにはドキュメントが欠かせないからです。特に説明責任、透明性、コンプライアンスは適切な記録管理なくして果たすことのできない項目です。
またこれに伴い、それぞれの組織はCSRの実践記録をアーカイブ化し、歴史的資料として永久保存することも重要になってくるでしょう。

アーカイブ研究所所長 小谷允志
記録管理学会前会長、ARMA(国際記録者管理協会)東京支部顧問、日本アーカイブズ学会会員、日本経営協会参与、ISO/TC46/SC11(記録管理・アーカイブズ部門)国内委員。
著書に『今、なぜ記録管理なのか=記録管理のパラダイムシフト』(日外アソシエーツ)など。