組織内で発生する『メモ』は公文書か否か―原発対策関連の公文書散逸報道から―
毎日jpの2011年12月17日付の記事によると、原子力災害対策本部と政府・東京電力統合対策室の合同会見で、園田康博・内閣府政務官は「全体会議の議事録は取っていない」と明言し、さらに「(事故対策の)時系列のメモはあるが、内部文書なので公開しない」として、記者からの関係文書の開示要求を突き放したとのことです。
また、メモは各省でとりまとめているが、そのメモが行政文書にあたるのか否かについても明言を避けています。
「メモ」が、組織的に用いられていない「個人のメモ」だから情報公開法で開示請求される行政文書には該当しない、開示する必要はないという含意が読み取れます。
さらに、メモが「個人のメモ」と意味づけられることによって、対策室における政府と東電のやり取りを表す記録が一般国民にクローズされ、一連の事故対策が適切な措置だったのか否かを一般国民の目で検証できる術(すべ)がなくなることをも意味します。
アメリカ国立公文書館(NARA)では、手書きメモも含め文書は行政の持ち物ではないとして、積極的に公開しています。日本の官僚機構では稟議制が敷かれており、その文書の流れとして起案文書の発生から指示・コメントを経て訂正され、決裁文書に至ります。
日本ではこの流れの中で指示・コメント、つまり意思決定過程のわかる文書・メモ類が個人のキャビネットに収められ、その後廃棄し散逸されてしまう傾向にありますが、アメリカではこの指示・コメントの部分も行政文書として残されることに決定的な違いがあります。
どんな内容のメモが行政文書にあたるかの判断一つ一つを、担当者間あるいは関係官僚に任せるのではなく、文書の流れの中で残しておく記録とは何かを、アーキビストやレコードマネージャーなど専門家が主導となって議論し、提示していく段階にあるのではないかと考えます。
関連情報:「大震災と報道:原発対策関連の公文書散逸の恐れ 検証作業の支障に」

ヘリテージサービス事業部アーカイブ担当 小根山 美鈴
都内の大学史編さん室、独立行政法人の研究所でアーカイブズの業務に従事の後、現職に至る。日本アーカイブズ学会会員。