デジタルアーカイブの二次利用
5月12日、日本図書館研究会第338回研究例会にて、「京都大学貴重資料デジタルアーカイブ二次利用自由化の取り組み」というテーマの発表がありました。
京都大学は、学内に複数の専門図書館があり、また、総合博物館、文書館、研究資源アーカイブなど、多くのアーカイブ機関を持っています。今回の発表では、京都大学図書館機構のデジタルアーカイブ公開の取り組みが紹介されました。
オープンアクセス推進事業の中で、近年、大規模な電子化プロジェクトが実施され、その成果が「京都大学貴重資料デジタルアーカイブ」として公開されています。文化財を含めたコレクションの数々が、インターネット環境があればどこからでも、高精細画像で見ることができます。既存のサイトシステムからのサイト構築・データ移行の過程も大変興味深いものでした。
そして、このデジタルアーカイブ公開に当たっての新たな取り組みとして紹介されたのが、「貴重資料画像二次利用の自由化」です。規則を改正し、資料の所蔵機関が認めるものについては、利用申請なしでの二次利用を可能としています。
ここで特徴的なのは、①すべての資料に対して自由化しているわけではないこと、②学内に複数の資料所蔵機関があるため、所蔵機関が現状に合わせて選択できるようにしていることです。
資料によって権利が変わるため、資料を検索した際に、二次利用するために必要な手続き分かりやすく表示されるように工夫もされています。所蔵側は定期的に利用申請がある資料などへの対応の省力化、利用者側は手続き時間の短縮化が可能となり、双方に便利な方法です。
アーカイブ資料の公開や活用は、アーカイブの必要意義の一つであり、管理者の運用しやすさと利用者の活用しやすさの両立は大きな課題です。著作権の問題もかかわるため、どこでも同じ方法がとれるわけではありませんが、とても参考となる取り組みでした。
ヘリテージサービス事業部アーカイブ担当 小清水 萌木
大学図書館で司書として、レファレンスや図書資料整理に携わった後、現職に至る。