『社史・アーカイブ総研の挑戦-組織の歴史継承を考える-』を刊行しました
出版文化社は2019年10月、「社史・アーカイブ総合研究所」を社内に立ち上げました(設立趣旨などは、末尾のURLをご参照いただければ幸いです)。その活動の第一弾として、出版文化社が蓄積してきた社史制作、アーカイブ構築に関する基礎的な知識の一端を紹介したのが、『社史・アーカイブ総研の挑戦』です。今回は、本書のなかで小谷允志「現用文書管理とビジネスアーカイブの融合を期待する」、拙稿①「日本のビジネス・アーカイブにおける出版文化社の成果と今後の役割」、拙稿②「学園アーカイブの現状と課題」について、その内容を簡単に紹介していきます。
小谷允志氏は、日本のレコードマネジメント(文書管理)を長らく牽引してきた、第一人者です。本書のなかで小谷氏は、文書管理とアーカイブを連続的に捉えることの重要性をあらためて強調しています。記録(文書)が歴史資料(アーカイブ)となる過程は、川の流れにたとえられることがあります。つまり、文書管理が「川上」(上流)、アーカイブズが「川下」(下流)であり、これが「よどみなく」流れていく体制を構築することが極めて重要なのです。ところが、日本のビジネス・アーカイブにおいては、「川上」から「川下」に記録が流れることなく、分断されてしまっています。本書では、その要因を欧米と比較しながら論じています。
拙稿①は、アーキビストの視点から、ビジネス・アーカイブをとりまく業界の現状について紹介しています。このなかで、アーカイブ構築の過程を示したうえで、アーカイブを実現するためには、「旗振り役」としてのアーキビストの存在が不可欠であることを簡潔に述べています。
拙稿②は、学園アーカイブの現状と課題について、出版文化社の業務上得た知見をもとに論じたものです。学園においては、少ない予算と人員のなかで学術研究との連携による成果の活用(展示など)が常に求められています。この業務を円滑にこなしつつ、アーカイブの根幹となる整理(目録作成)を同時に進めていくことは困難を伴います。本章はそうした現状をふまえつつ、その解決策の大枠を提示しています。
以上、おおまかに内容を紹介してきました。小谷氏と私がお伝えしたいのは、文書管理とアーカイブを「当たり前」のように実施する社会へと日本がかわることです。社史・アーカイブ総合研究所の第一弾の成果物である本書が、皆さまのアーカイブ構築に少しでも寄与するものとなれば幸いです。
■社史・アーカイブ総合研究所URL:https://shashi-archive.jp/
※一部ページは登録者様専用ページとなっております。詳細は「会員規約」をご参照ください。
■本書の購入を希望される方は、出版文化社までお問い合わせいただけますと幸いです。
ヘリテージサービス事業部アーカイブ担当 中村 崇高
県立の公文書館職員として公文書の評価・選別、古文書の整理、展示業務などに従事の後、現職に至る。