アーキビスト認証制度の開始
様々な記録を歴史的・管理運営的な観点から評価・選別を行って整理し、適切な保存管理を行う史資料記録管理の専門家をアーキビストと呼ぶのは周知のことかと思いますが、このアーキビストを公的な資格にすべく、国も乗り出してきました。今回はアーキビスト認証制度について触れたいと思います。
独立行政法人国立公文書館は「アーキビスト認証の実施について」(令和2年3月24日、国立公文書館長決定)に基づき、令和2年度からアーキビストの認証を行うことを発表しました。この認証によりアーキビストを専門家としての社会的地位を確立することを目指すとのことです。(詳しくは国立公文書館のHPをご参照ください。http://www.archives.go.jp/)
これまでアーキビストは図書館司書や博物館学芸員と異なり、カリキュラムの中でその資格を取得できる大学も多くありませんでした。しかし、このアーキビスト認証制度の誕生により、今後資格取得の選択肢は増えるものと思われます。ただ、認定の基準として修士課程相当の知識と3年以上の実務経験を必要としており、高い専門性が求められています。理論や知識だけではなく、実際に史資料を収集・整理・管理・活用する能力も問われているわけです。
また、認定基準の中では、大学院教育における単位取得のほか、関連機関の研修終了が挙げられていますが、そのうちの1つとして、国文学研究資料館アーカイブズ・カレッジがあります。アーカイブズ・カレッジは、毎年、東京で長期コース(6週間)、地方で短期コース(1週間)を開催し、アーカイブズに関わる多くの人材を育成しています。大学以外の専門機関で、アーカイブズに関する最新の専門知識に触れることができる唯一といってもよいこの講習会ですが、予算の減少に伴い2020年度からは地方での短期コースが中止となったそうです。しかし、地方開催を望む声や、昨今の地方コミュニティの疲弊や頻発する災害によるアーカイブズの被災などもありアーカイブズ・カレッジ地方開催を再開するために、現在クラウドファンディングによる支援を受け付けているとのことです。(ご興味がある方はhttps://readyfor.jp/projects/kokubunkenをご覧ください。)
いずれにせよ、アーキビスト認証制度が始まることでアーキビストの認知度が高まっていくとともに、認定基準が明確に示されたことで今後、高等教育機関や専門機関でのアーキビスト養成の充実が図られていくことでしょう。
ヘリテージサービス事業部
アーカイブ担当
飛鳥馬 一峰