特定秘密保護法の成立と海外事例の論考から見る課題
特定秘密の保護に関する法律(以下、「特定秘密保護法」とする)が12月6日に成立、そして本日公布されました(平成25年12月13日法律第108号)。各方面からの反対意見を振り切り、やや強引に成立された印象が残りました。
今回は前回のコラム(※1)に引き続きこの特定秘密保護法について、秘密指定の判断と監査を中心に、海外の事例を比較してみます。
今岡直子氏(国立国会図書館調査及び立法考査局行政法務課)の論考(※2)では、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス等を中心に、情報の保全と公開のあり方をめぐる諸外国のルールを概観しています。例えば、アメリカの大統領令13526号では以下の通りにまとめられます。
- (1)指定権限者は、大統領及び副大統領、大統領が指定した行政機関の長及び上級幹部職員並びに権限を委任された連邦政府職員(大統領令1.3条)
- (2)機密指定・解除の適正化のために、議会の上院・下院の特別委員会、国家機密解除センター、省庁間機密指定審査委員会等が置かれている。
- (3)国立公文書館に移管された機密指定文書は、大統領令に基づいてアーキビストが機密解除を行い、機密レベルを下げる義務を負う。(大統領令3.2条(c)項)
イギリスでは、2000年情報自由法が制定されたことによって公務秘密法や1958年公記録法では補えなかった現用文書の情報へのアクセス制度と、非現用文書の利用制度が整えられています。また、2013年司法及び安全保障法により議会情報安全保障委員会が再編され政府の活動を監視し、対象機関に対して情報の開示を強制する権限も与えられているようです。ドイツでは議会監査委員会、フランスでは国防秘密査問委員会が機能しています。
この論考に見るように、諸外国では慎重な論議を重ね、関係法令や監視制度を設けています。このような制度をもとに、各国の国立公文書館へ記録が移管されているのです。それに比べると日本は不十分な点が多いことを否めません。今後、日本と諸外国の当該制度と国立公文書館の役割、そしてアーキビストの関与についても比較・検討する必要がありそうです。その「論議」が始まるであろうことを期待します。
※1 アーカイブ・コラム「残る記録・残らない記録・残す記録
~特定秘密保護法案最終案と国立公文書館の役割とは」(2013年10月18日掲載)
https://www.archive-support.com/column/156.html
※2 「諸外国における国家秘密の指定と解除―特定秘密保護法案をめぐって―」『調査と情報―ISSUE BRIEF』NUMBER806、国立国会図書館、2013.10.31.
http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_8331133_po_0806.pdf?contentNo=1
(上記の全ウェブサイトの最終アクセス日:2013年12月13日)

ヘリテージサービス事業部アーカイブ担当 小根山 美鈴
都内の大学史編さん室、独立行政法人の研究所でアーカイブズの業務に従事の後、現職に至る。日本アーカイブズ学会会員。